42Tokyoという学校をご存じでしょうか。フランス発のエンジニア養成機関で、学費が無料。そのかわり入学試験が変わっていて、「Piscine(ピシン)」と呼ばれる約1ヶ月の選抜課程を丸ごと受ける必要があります。
ネットで検索すると、Piscineの合格体験記はたくさん出てきます。でも、落ちた側の記録はあまりありません。私は落ちた側です。だからこそ書ける話をします。
受けようと思ったきっかけ
当時の私は仕事を辞めて、失業手当で生活していました。「何かやらなきゃな」と思っていろいろ調べていたときに、42Tokyoを見つけたんです。学費無料、書類選考なし、実力だけ。率直に「面白そうだ」と思って応募しました。
Piscineの前に、まずオンラインの試験があります。私のときは数学っぽい問題で、ひらめきというより、時間をかければ解けるタイプのものでした。ここで身構えなくて大丈夫です。
Piscineの1ヶ月はこんな感じ
会場は、パソコンがずらっと並んだ教室です。始まって最初にやることは、課題を解くことではありません。「そもそも何をすればいいのか」を、目の前のパソコンを触って自分で調べるところから始まります。説明はほぼないんです。
戸惑いますが、周りの人と会話はできます。情報交換をしながら、みんなで手探りで進んでいく。この「一緒に泳ぐ」感じが、Piscine(フランス語でプール)という名前の由来を実感させてくれます。
私の回は40人ほどいました。夏休みを利用して来た大学生、会社を休職して来た人、エンジニアとして働きながら来た人、私のような無職の人。国籍もいろいろで、年齢は20代が多く、30代半ばの私は上のほうでした。
東大生に教えた初日、助けられたその後
初日、たまたま隣に座った人と仲良くなりました。彼は東大生でした。
初日だけは、私が彼に教えていました。プログラミング経験があったからです。でも、それ以降はずっと彼のほうが進捗が早くて、逆に助けてもらう側になりました。
以前、職業訓練の体験記で「優秀に見える人との差は、才能ではなく経験の差かもしれない」と書きました。その考えはいまも持っています。ただPiscineでは、その先を見ました。新しいことを吸収する速度そのものが、圧倒的に速い人たちがいるんです。彼と同じくらいの人が、40人の中に数人いました。
1ヶ月ずっとPiscine漬けで、私は正直大変でした。でも彼は「別に大変じゃない。受験勉強はこれが1年続くような感じだった」と言うんです。トップレベルに地頭がいい人はこういう感じなのかと、素直にすごいなと思いました。もっとも、それすらも積み重ねてきたトレーニングの差なのかもしれませんが。
結果は、不合格でした
最終試験で落ちました。
悔しくなかったと言えば嘘になります。でも、断言できることがあります。行ってよかった。
社会人になってから、同じ目標に向かって仲間と切磋琢磨する機会って、ほとんどないんですよ。朝から晩まで課題に向き合って、隣の人と教え合って、できたときに一緒に喜ぶ。あの1ヶ月は、学生時代以来の濃さでした。それが無料で経験できたんです。
最新の情報は公式サイトで
試験の形式やPiscineの内容は変わることがあります。挑戦を考えている人は、42Tokyo公式サイトで最新の募集要項を確認してください。
Piscineが向いている人
- 1ヶ月、学習に集中できる時間を確保できる
- 教わるより、自分で調べて試すほうが性に合う
- 年齢や経歴に関係なく、実力で評価されたい
逆に、体系立てたカリキュラムで手順どおりに学びたい人には、スクールや職業訓練のほうが合うと思います。私は職業訓練とPiscineの両方を経験しましたが、性質はまったく別物でした。どちらが上ではなく、合う合わないの世界です。
落ちても得るものがある場所は、そう多くありません。迷っているなら、それだけ伝えておきます。